読書

ウェンディ・ムーア - 解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

膨大な標本、世界初の自然史博物館、有名人の手術、ダーウィンよりも70年も前に見抜いた進化論…。「このジョン・ハンターはまぎれもなく、イギリスの誇る奇人の伝統を脈々とうけつぐ人物であり、その影響は医学の世界をはるかに凌駕している。かれの奇人ぶり…

荒俣宏-理科系の文学誌

「科学こそが幻想である」。19世紀ヨーロッパの博物学に豊かなイマジネーションを見出す著者が、ニュートンからバラード、ディックなどSF・幻想文学を科学の眼で読み解く。 面白い! 面白すぎて荒俣宏ってやっぱりすごいな、と再認識しました。ただ博覧強記…

ジム・フジーリ - ペット・サウンズ

[rakuten:book:12755585:image] 恋愛への憧れ、親との確執、引きこもり、麻薬、肥満、……ビーチ・ボーイズの最高傑作『ペット・サウンズ』は、一人の青年の壮絶な戦いの記録だった。 ジム・フジーリによる「ペット・サウンズ」の極私的評論。 好意的な書評を…

買ったもの

ジョン・スラディック-見えないグリーン トーマス・M・ディッシュ-プリズナー 宮武外骨-面白半分 をブックオフでそれぞれ100円で入手。大分前に赤瀬川原平の「外骨という人がいた」を読んで以来、何故だか宮武外骨を架空の人物だと思い込んでいたんですが、…

泉鏡花-草迷宮

実は現在金沢に住んでいるので、泉鏡花の小説を一つぐらい読んでおかないと駄目かなと思い立ち読了。とても面白かった。 要はマザコン野朗が怪異に見舞われるという物語なんだけど、200Pに満たないこの小説の二重三重に入り組んだ構造に圧倒される。 解説で…

yom yom

新潮社から創刊された雑誌yom yomをカート・ヴォネガットの「キヴォーキアン先生、あなたに神のお恵みを」に惹かれて購入。 短いながらもメアリ・シェリー、アイザック・アシモフやあのキルゴア・トラウトも登場してと盛りだくさんの内容。面白かった。 浅倉…

フレッド・ローレンスガイルズ-伝記ウォーホール パーティのあとの孤独

幼いころは母親ジュリア、学生時代は美術をともにこころざす友人がいた。ファクトリーには四六時中アウトサイダーが入り乱れ、夜ごとのパーティでは社交界の名士とゴシップに花を咲かす。アンディはつねに誰かと一緒だった。誰かに守られていた。天使のよう…

ルイス・シャイナー-グリンプス

【世界幻想文学大賞受賞作】 ステレオ修理屋の青年は、父親を事故で亡くしたのち、自らの不思議な能力に気づく。60年代のロック・ミュージックに思いを馳せるや、当時の“幻の名盤”がスピーカーから流れ出た! ドアーズ、ビーチボーイズ、ジミ・ヘンドリック…

マイク・レズニック-一角獣をさがせ!

うだつのあがらない私立探偵のマロリーは、大晦日の夜、ひとり寂しく酒を飲んでいた。すると緑色の妖精が出現して、盗まれた一角獣を探してほしいという。すべてはアルコールの幻覚症状かと思われたが、どうやら妖精はほんとうに目の前にいるらしい。現実の…

古川日出男-13

霊力の森、黒いマリア、神のドキュメント、降臨、未開部族、サル学の現在、邂逅、闇の奥の闇、無限の色彩の画布、狂信者、黙示録、千年王国、裏切り、復讐、殺戮、再会そして、つきまつわる謎の認識票「13」と分身「13」。全知全能のエンタテイメント小説。 …

チャールズ・ブコウスキー-ブコウスキーの「尾が北向けば・・・」

やっぱブコウスキーは最高だわ。 短編集で、ショートショート並みの短さの短編もあったりするんですが、どれもこれも星新一のショートショート三原則(セックス、暴力、時事ネタ禁止)を見事に蹴破ってくれてます。さすがだ。 中でも「上流階級のオンナ」は…

森博嗣-工学部・水柿助教授の日常

水柿小次郎三十三歳。後に小説家となるが、いまはN大学工学部助教授。専門は建築学科の建築材料。よく独身と間違われるが、二歳年下のミステリィ好きの奥さんがいる。彼はいつしか自分の周囲のささやかな不思議を妻に披露するようになっていた。きょうもまた…

酒見賢一-陋巷に在り

聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった…息づまる呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論…

矢作俊彦-複雑な彼女と単純な場所

「その夏、私たちは、ある事情から巨額の金をつくることに熱中していた」―大友克洋をアメリカに売り飛ばし一攫千金をたくらむ矢作一味は、この天才マンガ家のスランプ解消作戦に着手。バケツ一杯のカニを食わせるべく、北海道に飛んだ…。抱服絶倒のカニ食い…

カート・ヴォネガット-モンキーハウスへようこそ(1・2)

日に三回の道義避妊ピルの服用、そして街角には自殺ホーム―人口過剰の未来社会でとられた政策は、セックスの禁止と自殺の奨励だった。だが、性の解放を謳う反逆者が、一人また一人と現われる…。表題作はじめ、役を演じるたびにその人物になりきってしまうア…

阿部和重-ABC戦争

はじまりはN国・T地方・Y県の通学列車。不良高校生の些細な喧嘩がなぜヤクザを巻き込む全面抗争にまで暴走したのか?あの“戦争”から数年後、執拗に真相を追う青年の姿は、あたかも探偵であり、暗号解読者であり、哲学者であり、そして小説家でもあり…。世界の…

村上春樹-世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・…

チャールズ・ブコウスキー-パルプ

ニック・ビレーンは、飲んだくれで、競馬が趣味の超ダメ探偵。ところが、そんな彼に仕事が二つ転がり込む。ひとつは死んだはずの作家セリーヌをハリウッドで見かけたから調べてくれという“死の貴婦人”の依頼、もうひとつは“赤い雀”を探してくれという知人の…

カート・ヴォネガット-チャンピオンたちの朝食

次々と傑作を発表しながら、ポルノ小説と誤解され、まったく芽のでないSF作家キルゴア・トラウト。3度の結婚にも失敗し、話し相手はオウムだけ―不遇の生活を送る彼のもとに、ある日、アート・フェスティバルの招待状がまいこんだ。開催地は中西部にあるミッ…

パトリシア・ハイスミス-太陽がいっぱい

息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへと旅立った。息子のディッキーに羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。精致で冷徹…

Paul Auster-City Of Glas

洋書に挑戦してみるべ、と思ってポール・オースターのニューヨーク三部作をまとめた「The New York Trilogy」を購入。 それから辞書片手に悪戦苦闘すること1週間と少しで、ようやく「City Of Glass」を読み終わることが出来た。 でも内容を完全に理解できた…

イタロ・カルヴィーノ-不在の騎士

中世騎士道の時代、フランス軍勇将のなかにかなり風変わりな騎士がいた。甲冑のなかは、空っぽ……。空想的な《歴史》三部作の一つで、現代への寓意を込めながら奇想天外さと冒険に満ちた愉しい傑作小説。 存在論とかなんかそういった感じの哲学的問いかけは割…

クリストファー・ムーア-アルアル島の大事件

「ムーアはいかれてる。でも、すごいセンスだ!」カール・ハイアセン絶賛の才能、C・ムーアによる抱腹絶倒の傑作コメディ・ノヴェル。南の島に隠された驚くべき秘密とは? 面白かった! 南の島、閉鎖的な島民、第二次世界大戦に端を発するカーゴ・カルト、エキ…

マイケル・シェイボン-ワンダー・ボーイズ

まいった。大学教授で作家のグレイディは危機に瀕していた。書いても書いても原稿が完成しないのだ。そのうえ妻には逃げられ、愛人からは妊娠を告げられる始末。そこへ破滅型の担当編集者クラブツリーがやって来て、事態はさらに混沌としてきた。ひょんなこ…

ダグラス・クープランド-シャンプー・プラネット

僕はどこにも属さない。そして、世界中と今この瞬間に繋がっている−−。十代が終わり、「工場」の街とガールフレンドを置き去りに新しい生活を始めたタイラーだが…。鮮やかな喪失感を描く、全世界的十代の青春。 訳者が黒丸尚だから読んだ「ジェネレーションX…

古川日出男-ロックンロール七部作

ロックでポップな、新たなる20世紀神話。 "あたし"が語るのはロックンロールの誕生と隆盛。爆発的に広がるロックを追いかけつつ、物語は20世紀という時間、七大陸という空間を呑み込んでゆく。壮大なヴィジョンで描き直す新・20世紀史。 「ベルカ、吠えない…

パトリシア・ハイスミス-世界の終わりの物語

晩年のハイスミスが、自然界と人間のさまざまな崩壊の物語を綴った 生体実験の遺体を埋めたオーストリアの墓地に、異常繁殖する巨大キノコの謎。放射性廃棄物の処理に困ったアメリカ政府が打った秘策と、そのかげで起きた恐るべき事故。高級高層マンションを…

イアン・マクドナルド-黎明の王、白昼の女王

「ファンタシーにおいては・・・すべての物語は三巻を経、妖怪狩猟(ワイルド・ハント)に言及していなければならない」 ――デイヴィッド・ラングフォード 『メキシコンⅢ プログラムブック』より 上記を遵守したイアン・マクドナルドのファンタジイ小説で、フィ…

リチャード・マシスン-ある日どこかで

あと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテルで、女優エリーズの色あせたポートレイトを目にした。恋におちた彼は、彼女に一目会おうと1896年への時間旅行を試みる。映画化・舞台化され、今もなお熱狂的な人気を博す…

晶文社が一般書部門から撤退

今更ながら知りました。ショック大。 最近だとイーリイ「ヨットクラブ」、リッチー「クライム・マシン」など良質のミステリを出版してくれていただけに残念無念。 それに晶文社から出た「海を失った男」は昨今のシオドア・スタージョンブームの先駆けでもあ…