ルイス・シャイナー-グリンプス

グリンプス (創元SF文庫)

世界幻想文学大賞受賞作】
ステレオ修理屋の青年は、父親を事故で亡くしたのち、自らの不思議な能力に気づく。60年代のロック・ミュージックに思いを馳せるや、当時の“幻の名盤”がスピーカーから流れ出た! ドアーズ、ビーチボーイズジミ・ヘンドリックスの音源を求めて過去へのトリップが始まる。ロックSFファンタジイ。

はまぞうでリンクを作成するときに表示される関連商品がケン・グリムウッドの「リプレイ」とブライアン・ウィルソンの「スマイル」だっていうのは、この小説の内容を完璧に表現している気がするなあ。家族の問題と60年代音楽シーンを絡めた良作でした。
特にブライアン・ウィルソンのエピソードが秀逸。父親やメンバーとの確執から麻薬に耽溺し、潰れそうになるブライアンの様子はフィクションとはいえぐっとくる。これはもう少し前にブライアン・ウィルソンがスマイルを完成させるまでのドキュメンタリーを見たとか関係大有りで。余談ですけどそのドキュメンタリーの最後を締めくくるライブシーンで、ポール・マッカートニーヴァン・ダイク・パークスが笑顔でスタンディングオベーションするところは本当に最高。
ドアーズとジミヘンの話は、こちら側に大して思い入れが無いんで、良くはあるもののただそれだけという感じ。でも「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン」ってこれがポール・J・マコーリイのフェアリィランドに登場するキャラクターの元ネタだったのかとか、バッファロー・スプリングフィールドにもお蔵入りとなった幻のアルバムがあったんだとか音楽関係の薀蓄が沢山入っていて楽しい。


60年代の音楽に過剰な思い入れがある人にお勧め。ペット・サウンズでも聴きながら読もう。
☆☆☆☆