ウェンディ・ムーア - 解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

膨大な標本、世界初の自然史博物館、有名人の手術、ダーウィンよりも70年も前に見抜いた進化論…。「このジョン・ハンターはまぎれもなく、イギリスの誇る奇人の伝統を脈々とうけつぐ人物であり、その影響は医学の世界をはるかに凌駕している。かれの奇人ぶりは群をぬいており、それが証拠にかれは当時、そしてその後の小説などに多くのモデルを提供している。本書を抜群におもしろくしているのは、そうしたかれの奇人的なエピソード群のためであり、そしてそれが現代のぼくたちにつきつける問いかけのためだ。」近代外科医学の父にして驚くべき奇人中の奇人伝。奇人まみれの英国でも群を抜いた奇人!『ドリトル先生』や『ジキル博士とハイド氏』のモデルとも言われる18世紀に生きた「近代外科医学の父」を初めて描く驚嘆の伝記。

これは面白い!
迷信だからけの医療に科学的手法を持ち込んだ偉人ジョン・ハンターの伝記。
当時の世相を切り取りながら語られる、目的はいたって真面目な奇怪な行動の数々。
医療の進歩のために死体を盗みまくり、自らの性器で性病の実験を行うなんてこと普通はできません。
一番アホらしかったのは、死が訪れるのは心が折れた時だと考えていたある作家が臨終寸前に気合を入れたら、逆にそのショックで死んでしまったというエピソード。馬鹿にもほどがあるでしょ。

笑えて、そして宗教的価値観と科学的価値観の対立に考えさせられる本です。
アーサー・C・クラークの名言”人類の一番の悲劇は、道徳が宗教にハイジャックされたことだ”を思い出しました。