イアン・マクドナルド-黎明の王、白昼の女王

黎明の王 白昼の女王 (ハヤカワ文庫FT)

「ファンタシーにおいては・・・すべての物語は三巻を経、妖怪狩猟(ワイルド・ハント)に言及していなければならない」
――デイヴィッド・ラングフォード


『メキシコンⅢ プログラムブック』より

上記を遵守したイアン・マクドナルドのファンタジイ小説で、フィリップ・K・ディック賞受賞作。
ジョン・クロウリーのリトル、ビッグが80年代のファンタジィであるのと同じように、イアン・マクドナルドの『黎明の王、白昼の女王』は90年代のファンタジィとなるべき作品である」と言われたらしいけど、確かに『黎明の王、白昼の女王』は『リトル、ビッグ』と違って90年代的。


クロウリーの『リトル、ビッグ』はル=グウィンをして「この一冊でファンタジイの再定義が必要になった」と言わしめた傑作で、あらゆるところからネタを引っ張ってきたと言ってもいいぐらいに衒学的でそれ一冊では完結しないような小説だった。
『黎明の王、白昼の女王』はさらにそれを90年代的に推し進めるた小説と言っていいだろう。
作中のセリフが良くそれを表している。
リミックスだ。すべてがリミックスなんだよ。分解し、分析し、サンプリングし、ふたたびいっしょにする


閑話休題


それにしてもイアン・マクドナルドは小説が上手いなあ。
凡百のファンタジイ小説を皮肉ったとも読める作品でありながら、決して奇を衒うだけのものではないし、それどころか二部と四部のラスト付近の展開には思わずグッと来てしまった。
ちょっと長いのが玉に瑕。
☆☆☆☆☆