パトリシア・ハイスミス-11の物語

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

動物学教授のクレイヴァリングはひとり南海の孤島へ船出した。伝説の巨大かたつむりを見つけ、歴史に名を残そうというのだ。だが運よく発見には成功したものの、船が流され、彼は島でたったひとりに…。孤立無援の男を襲う異常な恐怖を描く「クレイヴァリング教授の新発見」他、人間心理の歪みが生みだす恐怖と悪夢に彩られたサスペンスの鬼才の傑作短篇集。

「すっぽん」「モビールに艦隊が入港したとき」「野蛮人たち」「からっぽの巣箱」なんて日常のさりげない狂気を描いた短編もいいけど、パニック物(しかもB級)の「かたつむり観察者」と「クレイヴァリング教授の新発見」が怖すぎる。
どっちもかたつむりに襲われるってお話なのだが、パトリシア・ハイスミスが細部に至るまでかたつむり生態やぬめぬめした光沢の気持ち悪さとか、それとは真逆の性交の美しさ(士郎正宗も「攻殻機動隊」で言及してたな)を描いていて気持ち悪いやら美しいやらで変てこな陶酔感に陥ってしまう。
ジャイアントかたつむりに体を貪り食われたり、無数のかたつむりに体を覆われて死に絶えていく事を考えると思わず身震いして脅えちゃって、それと同時に変てこな陶酔感も手伝って何故かひどく死にたくなる。
大丈夫か、オレ。


それとそのおかげで今まで毎晩高級フランス料理に舌鼓をうっていたのだが、ブルゴーニュエスカルゴが怖くて店に行けなくなってしまった。
何てこったい!
☆☆☆☆