マイクル・クライトン-恐怖の存在

恐怖の存在 (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)恐怖の存在 (下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

パリの北にあるフランス海洋学研究所から、証人と証拠を消し去ったうえで、波動力学の実験データが盗み出された。時を同じくして、マレーシアでは空洞発生装置が、ロンドンでは膨大な量の対戦車ミサイル用の誘導ワイヤーが、そしてカナダでは小型潜水艇が、それぞれ何者かによって調達されていた。一方、MIT危機分析センター所長のジョン・ケナーはネットを通じていち早くその動向をキャッチする―これらを結びつける共通項はいったい何なのか?平均海抜1mの島嶼国家ヴァヌーツは、水位上昇による領土の喪失を恐れ、地球温暖化の元凶であるとして最大の二酸化炭素排出国アメリカを相手にした提訴を決める。訴訟支援を表明した環境保護団体NERFに、多額の資金援助をしている富豪ジョージ・モートンだが、その行動が普段と違うことに顧問弁護士のピーター・エヴァンズは気づく。時を置かず、モートンは失踪して行方不明となり、自宅からは暗号のように四組の数字が並べられたメモが発見される。そこにケナーが現われ、人為的気象災害を目論む環境テロリストの存在が明らかとなるのだが、果たして目標となる地域は何処で、一体そこで何が引き起こされるのか?エヴァンズはモートンの秘書サラと共に、南極に始まる、世界各地での戦いの渦に巻き込まれて行く。いま現実に起こり得る恐怖を描きながら、地球温暖化問題への明確な立場を示して、全米でも話題騒然の巨匠最新作。

地球温暖化は本当か?って視点から実在の資料を用いて描かれてるところは面白いし、そこからマスコミ批判や現代文明批判の批判をしたりするのもよい。
だがSFとしては大味すぎるきらいがある。
映画化を意識しすぎているような無駄で派手なアクションシーンの数々にはげんなり。
それは兎も角、本気で地球温暖化についてのクライトンの意見には頷かされるほど説得力があった。実在の資料を使っているって部分には特に。
しかし、よくよく調べてみるとクライトンの言ってる事もあやしい部分がかなりにあるらしい。
http://www.brookings.edu/views/op-ed/fellows/sandalow20050128_jap.pdf
http://www.pewclimate.org/state_of_fear.cfm
上記のサイトで指摘されてることとかね。
でもクライトンとしてみれば、こうして環境問題についての議論が活発になったんだからそれでOKなんだろうな。
小説としては二流だが、問題提起としてみれば一流。
☆☆☆