ジェフ・ライマン-夢の終わりに・・・

夢の終わりに… (夢の文学館)

児童文学の古典的名作である「オズの魔法使い」の主人公ドロシーには、実はモデルがいた。ドロシーが孤児であったという物語の設定をヒントに、「オズの魔法使い」成立の謎を自由に空想したファンタジー小説

オズの魔法使い」を下敷きにした小説。
といっても、一昔前に流行した「本当は怖いグリム童話」みたいなお前らの知ってる童話の本当の姿はこうなんだよ!ぐへへ的なものではない。
「夢の終わりに・・・」で描かれるのは人間の業であり、それゆえに現実の拒絶しファンタジーの世界に逃げ込まざるを得ない人々の姿である。
それは、ドロシーのモデルとなった孤児、病に犯され死を目前にした俳優、精神科医ジュディ・ガーランドライマン・フランク・ボームなどの視点から虚々実々入り乱れて物語られる。


そのせいか冗長すぎるきらいがあるし、最初はいつ面白くなるんだろーと退屈気味に読んでいた。
でもこれが第二部からがスゴイ。
それまではよくある少女が馴れない田舎で辛い目にあうって話だったのだが、そこに行き成りジャック・ケッチャムが殴りこんでくるのだ。
これには参った。正しく怒涛の展開。
そして第二部・第三部ともにラストが美しく、ただただ泣ける。
やさしいマジックリアリズムに心を揺さぶられる。


喜怒哀楽どれともつかないような読後感が残る傑作。
☆☆☆☆☆