カート・ヴォネガット・ジュニア-ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを (ハヤカワ文庫 SF 464)
いやはや、面白かった。
強烈な博愛主義者で金と言う名の隣人愛を振りまくが、家族のことは全然知らんちんの主人公を始めとした多かれ少なかれ狂っている人々が織り成す人間喜劇(悲劇?)
何つっても以前から知ってはいたのだが

ぼくはくそったれな諸君が大好きだ。最近は、きみらの書くものしか読まない。
きみらだけだよ、いま現実にどんなものすごい変化が起こっているかを語ってくれるのは。
きみらのようなキじるしでなくては、人生は宇宙の旅、それも短い旅じゃなく何十億年もつづく旅だ、
なんてことはわからない。
きみらのように度胸のいい連中でなければ、未来をほんとうに気にかけたり、
機械が人間をどう変えるか、戦争が人間をどう変えるか、
大都市が人間をどう変えるか、でっかく単純な思想が人間をどう変えるか、
とてつもない誤解や失敗や事故や災害が人間をどう変えるか、
なんてことに注目したりはしない。
きみらのようにおっちょこちょいな連中でなければ、無限の時間と距離、決して死に絶えることのない神秘、
いまわれわれはこのさき何十億年かの旅が天国行きになるか地獄行きになるかの分かれ道にいるという事実──
こういうことに心をすりへらしたりはしない」
「才能に恵まれたスズメの屁どもなんて、くそくらえだ。
現実の大問題が、宇宙であり、永劫の時間であり、
これから生まれてくる何億兆もの人間であるというのに、
たった一人の人生のちっぽけな切れっぱしをきめ細かに描いて、
ことたれりとしてるんだからね

この一連の言葉にはやられた。
間違いなく明言であり、僕がSFを好きな理由そのものでもある。
☆☆☆☆☆