ノーマン・スピンラッド-星々からの歌

星々からの歌 (ハヤカワ文庫 SF (594))
アドルフ・ヒトラーがもしSF作家だったら・・・というアイディアの小説「鉄の夢」が有名で、佐藤大輔にも多大な影響を与えたといわれる異能作家ノーマン・スピンラッドの小説です。
この「星々からの歌」のあらすじは、<大壊滅>により人類のほとんどが死に絶え、わずかに生き残った人類は”太陽と筋肉と風と水の掟”を指標とする自然との共存を目指したコミューンと魔術師と忌み嫌われる黒い科学(原子力)の科学者たちとに二分されていたのだが、黒い科学が着実に白い科学を犯しつつあった・・・みたいな感じですかね。
小川隆の解説によればこの小説は60年代アメリカ的SF小説だそうです。
確かに昭和の終わりごろに生まれた僕でも知っている60年代アメリカ的モチーフが至る所に見受けられます。
(フリーセックス、ヒッピー、ウッドストック、ドラッグ、原子力ベトナム戦争、へんなオカルトetc)


読んでいて流石60年代だと思ったのは、やっぱりセックス面の描写。ジョー・ホールドマンの「終わりなき戦い」もそうだったけど、あいさつのようなコミニケーションの延長線上としてセックスを捉えてるのが童貞の自分には信じられねえ。
特に「星々からの歌」の主人公である<クリア・ブルー・ウェイ>の熟練した達人であるクリア・ブルー・ルーはセックスをすることで他人のカルマを感じたり、己が正義を示したりするんでもう訳がわからない。果てはさよならジュピター的セックスまでしちゃうし・・・。
印象的なアフォリズムを引用。
正義が一物を立たせられない理由はないが、勃起が正義を保障する理由もない


閑話休題


肝心のストーリーは、前半・中盤にくらべて後半がありきたりな感じでで少し残念。
未訳の「Bug Jack Barron」はめちゃくちゃ面白いらしいので読んでみたいなあ。
☆☆☆