ジョー・ホールドマン-終わりなき平和

終わりなき平和 (創元SF文庫)

ヒューゴー賞ネビュラ賞・キャンベル記念賞受賞】
神経接続による遠隔歩兵戦闘体での戦いが実現した近未来。連合国は中米の地域紛争に対し、十人の兵士が繋がりあって操作するこの兵器を投入し絶大な戦果をあげていた。一方このとき人類は、木星上空に想像を絶する規模の粒子加速機を建造し、宇宙の始まりを再現する実験に乗り出していた。

今からちょうど三十年前にヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞トリプルクラウンを達成した名作「終わりなき戦い」。
この「終わりなき平和」は前作から二十余年の時を経て世に送り出された傑作。


ナノマシン、遠隔歩兵戦闘体、素粒子加速器による宇宙開闢などなど個々のアイディアは(原書が書かれた1997年当時でも)あまり目新しいものではない。
しかしジョー・ホールドマンはそれらを巧みに組み合わせ、"個"としての人間を問う透徹した物語を書くことに成功している。
正直に言うと僕は「終わりなき戦い」にはそんなに感銘を受けなかった。でも「終わりなき平和」にはガツンとやられた。すごいの一言。
ダブルクラウンも納得の出来だ。
ハヤカワでも創元でもいいから早く続編の「Forever Free」を翻訳してくれないかなあ。




余談だが、現在クライマックス目前で絶好調の「ガン×ソード」におけるカギ爪の男の思想(人々が無意識に同じ考えを持ち、同じ行動をとり、それに違和感を感じず、争う事も憎む事もなく全てを許しあう恒久平和状態、つまり終わりなき平和を作り出そうというもの)と「終わりなき平和」における科学者・マーティの思想は酷似している。
だが「ガン×ソード」ではカギ爪の男を敵として、「終わりなき平和」ではマーティを主人公側の指導者として描いている。
両者とも思想の統一化によって平和を作り出すことを善悪二次元論で描いているわけではないが、この見地の違いには面白いものがあると思う。
個人的にはガン×ソードの方に共感できるかな。童貞だから。