円城塔-Self-Reference Engine

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
イーガンmeetsヴォネガットという触れ込みでしたが、むしろ北野勇作meetsカルヴィーノじゃないかと思ったり。これはもう最近私が北野勇作カルヴィーノを読み直していたりするとか大いに関係ありで。
無限の可能性を秘めた文字列、ぶち壊れた時空間の中での物語。もろにカルヴィーノじゃないですか。短編集「柔らかい月」、特にその中の一編「モンテ・クリスト伯」はSelf-Reference Engineを思いっきり先取りしてる。デュマのモンテ・クリスト伯をテーマに繰り広げられる、不連続性の中に見出される物語、断片の無限の組み合わせによる物語の思考実験。あと現実/夢が多重に重ね合わせの状態として存在するってところに北野勇作を連想。でも北野勇作の諸作と比べると酩酊感がなくてリーダビリティは高い。ユーモアと知性が共存していてとても面白いんだけど、思索的にはまだカルヴィーノを超えてないかな。
☆☆☆☆