冲方 丁-マルドゥック・ヴェロシティ

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

灼熱の暗黒、失墜する魂
殺戮の果て、男の虚無への軌跡は終極に至る
ギャングの世代間抗争に端を発した拷問殺人の背後には、闇の軍属カトル・カールの存在があった。ボイルドらの熾烈な戦いと捜査により保護拘束されたナタリアの証言が明らかにしたのは、労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影だった。ついに牙を剥いた都市システムにより、一人また一人と命を落としていく09メンバーたち。そしてボイルドもまた、大いなる虚無へと加速しつつあった--暗黒と失墜の完結篇

面白かった。エルロイ文体には驚いたけど、スクランブルの時の才気走った感じもなく、とても上手に物語としてまとまっていた。
冲方がここまで地力で読ませる人だったとは。塩澤言うところのリアル・フィクション作家の中では、この人が一番じゃないだろうか。
ただ敵味方含め、フリークスショーと化している部分は小気味よくもあり安っぽくもありかな。2巻のキチガイ大集合のところで「ラノベじゃん」と投げ捨ててしまう人もいそうな予感。私はあのあたりからヴェロシティの内容が山本賢治絵で脳内再生されるようになってしまった。実際、山賢がすげー頭悪い感じにこれを漫画化してくれたら絶対買う。


SFマガジンのインタビューで続編の可能性を示唆していたけど、ここまでの小説を書かれるとさらなる傑作を期待してしまう。
これまで以上にゲロ吐いたり失踪したりしながら頑張ってもらいたいものです。
☆☆☆☆☆